日本の宝『医療制度』の『今』を見つめる

教養の再生のために加藤周一氏 ノーマ・フィールド 徐京植氏

ノーマ・フィールド Norma Field: 東京生まれ。米・シカゴ大学教員

日本の豊かさが生み出したもので尊いものが いくつもあります。

たとえば、一応誰でも利用できる医療制度。


個人負担が増える一方で、
個々の政策や病院にはいくらも問題があるでしょうが、

やはりアメリカと比べたら、うらやましい限りです。

国民全員が福祉を恩恵ではなく権利として認識し、
守り抜く用意、教養が必要でしょう。

経済の低迷を不平等の口実にしては
取り返しのつかないことになりかねません。
捨てがたいものをはっきり見極めておかないと 手遅れになります。

戦争をしかけるアメリカ国内で、その負担を担うのは 

弱者が形成する軍隊の死傷者やその家族だけでなく、

増大する軍事費のため、
さらに低下していく公教育や医療制度に頼らざるをえない人たちです。

戦争と貧困の悪循環は 
「勝者」大国においても なかなか断ち切れません。

地元の反戦ティーチインで、衝撃的な事実を知りました。

シカゴのホームレスの75%から80%は、
ベトナム戦争の在郷軍人だということです。

戦争の後遺症は、それだけ長く続くわけです。

どうしても政治に目を向けなければなりません。

アメリカの愛国法や日本の有事法制が 
私たちの生活を根底から変えてしまう可能性をはらんでいます。

空洞化してしまった議会政治、
それを支える選挙制度を市民の手で取り戻し、
民主主義のために活性化しなければなりません。

ちょっとブレイク

全米 無保険者5千万人 内 子供は900万人
L.A. のSkid Row(ドヤ街)へ 病院から文字通り捨てられる人々
'SiCKO' Premieres Outside on Los Angeles' Skid Row (6/25/07)
You Tube (Michael Moore監督の話題作”Sicko”で取り上げられる)

”国民皆保険制度”を先進国の中で唯一持たないアメリカ
医療費が払えないために 治療を拒否されて死亡する人が
毎年1万8千人 Le système est malade.腐ったシステム

マイケル・ムーア監督が、地元ミシガン州でNHKの取材に応じた。
以下 NHK BS1 『きょうの世界』2007,08,24 放送内容から抜粋

最大の問題点は、
今の医療保険制度が 利益を最優先にしているということです。
しかし、患者は何も知らないです。

その仕組みを知っていますか?

医師は患者を診察してから部屋を出ます。

そして保険会社に電話をして、
保険料が出るのかを確かめます。

もし保険会社が支払いを断れば、
「あなたは治療出来ない」と患者に告げるのです。

本当に残酷なシステムです。

私は映画を通して、人々に問いかけたかったのです。

なぜアメリカは、助けが必要な多くの人々を見捨てているのかと。

アメリカでもっとも多い破産の理由は、医療費です。
しかも、破産申請をした人の75%は、
民間の医療保険に加入していた人達なんです。

アメリカの平均寿命の順位は、42位(日本は1位)です。
アメリカにも、
日本や他の先進国が持っている国民皆保険システムが
必要だと考えています。

今より医療費が安くなり、もっと健康になれるでしょう。

日本人はアメリカ人よりも、少なくも4年長いんです。

なぜ日本人が自分達(アメリカ人)より長生きなのか、
問いかけるべきです。

アメリカも、昔は違いました。

病院は、町や教会などの宗教団体によって運営されていました。

私が生まれたミシガン州の病院は、
修道女達が運営していました。
私が生まれた時、

金儲けの意識など、どこにも無かったでしょう。

医療保険業界は1億ドル以上を投入して
”国民皆保険制度”を主張したヒラリー・クリントンを断念させた。

今や彼女は、医療業界から多額の献金
(85万4462ドル上院で2位の献金額=封印の褒美)を受ける身となった。
(ドキュメンタリー映画 新作「シッコ」内/シッコ=Sicko=狂人)

我々アメリカ人が犯した過ちから学び、
同じ道を歩んではならないと わかって欲しいと思います。

もっとも弱い立場の人間を 粗末に扱うなら、
日本もアメリカと同じ道を歩むでしょう。

社会の底辺に置かれる人々が増え続け、
殺人などの犯罪も増え続けるかもしれません。
銃を使った暴力にも 脅かされるでしょう。

十分な教育も受けられず、社会情勢に無知な若者が
増え続けるのです。日本がそうなって欲しいですか?

もし政府が、医療保険などの良い制度を台無しにしようとしたら、
立ち上がって 防がなければならない。

それが日本の皆さんに伝えたいことです。
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小泉りゅうじ氏 森田実氏 対談 2007,04,25

森田実氏 

江戸時代からですね、日本はかなり医療のいい国だったんです。

それは赤ひげ医師のような人がいたからです。


大きな地主が医者になって、
お金のない人を無料で面倒を見るようなことをやってきたんですよ。

その大きな延長線上で最近まで生きてきたんですけれども、

つまりアメリカがですね、

健康保険制度はいかんと言い始めたら、
健康保険制度を、じゃあ潰してしまおうと。

そうするとすぐには潰せないから、

医療費を引き上げたり、

いろんな制度改革をやっています。

実際はアメリカの保険会社がその医療を取りたいわけです。

その方向でですね、

厚生労働省も 
もう アメリカ側に向かって動き出している、

そのことから来る混乱が起こってですね、
今、病院がどんどん潰れているんですよ。

その原因は、医者が少なくなってしまったことにあります。

特に、産婦人科の医者が少なくなっていて、
もう5年前までですね、
6千あった子供を生むことができる病院が、今は事実上3千ですから。

つまり、妊娠できない社会を作ってしまったんですよ。

妊娠できない社会を作っておいて、

少子化対策だなんて、

これほどいんちきなことはないんですね。

それから小児科の医者が本当に少なくなりました。

これで子供の健康を保つのが非常に難しくなりました。

さらにですね、
医療費の引き上げによって、
医者にかかれない人が非常に増えてきました。

ですから、重症患者でないと救急車で病院に入れてもらえません。

アメリカがそうですけれども、そういう社会になりました。

ですから医療は深刻な混乱になりましたね。

奈良県 病院たらい回しで流産 
(奈良県では昨年8月、大淀町の病院で分娩(ぶんべん)中に
意識不明になった女性(32)が、約20の病院に転院を断られ死亡。

みんな自分の信念を捨てて、
どっちに流れていくのが有利かと、
政治家も含めてですね、
みんな 《風にそよぐ葦》のようになってしまっている


やはり人間はですね、特に指導者は

自分の信念に生きるんだ《考える葦》と思うんですよね。

これが基本なんだと思うんです。

    

勤務医開業つれづれ日記 医療堕落論 

日本の医療は素晴らしい成果を収めて評価されている。
しかも、医師数は限界まで少なくOECDでは最下位争いをしており、
医療費も先進国最低である。

アメリカでは大統領選挙に
日本型医療の「国民皆保険」を参考にした
保険制度を検討する意見が出ている。

最高の成果を極めて安い値段で受けられるのが、
今の日本医療なのである。

いや、「素晴らしい日本医療であった」と過去形で話すべきであろう。

バブル期をはさんで全く上昇しなかった診療報酬が、

2006年に3.16%の診療報酬という驚異的な減額を受けて、
余力の無い病院が一斉に赤字に転落し、
「患者さんのための医療」から
「採算性重視の医療」へと急激な変化を遂げているからだ。

救急をやれば経営的にマイナスになり、
産婦人科をやれば出産費用の踏み倒しが
病院全体の未収金の三分の一以上になり、
小児科をやれば子供に手がかかる分だけ人件費で赤字になる。

すべて、「採算性重視の医療」では、「やってはいけない医療」であるのだ。

その料金設定はすべて国が行っている。
診療報酬を決めているのは国である。

堕落せよ、と国が命令しているのだ。

自分の名誉もマスコミに引き裂かれ、
政府によって診療報酬は激減し、
患者に限りなく高い要求を受け、
司法による責任の認定は生涯収入よりも高く、

日本医療は今、崩壊する。

    

プロメテウスの政治経済コラム 医療崩壊政治の貧困そのもの

救急システム全体が悪循環に陥っている根本には、
自公政権の意識的な医師不足の創出がある。

医療費を抑制するには、
医師の数を減らすのが手っ取り早いというわけだ。

医療を受けたくても受けられないようにしてしまえということだ。

もう一つは、端的に診療報酬を引き下げることだ。

もともと救急医療は、
いつ搬入されるかわからない緊急患者を
一定数の医師が待っているという効率からいえば
人件費のかさむ不採算部門である。

「従来、療養病床の収入で救急の赤字をカバーしてきたが、

06年の診療報酬改定で報酬がカットされ、それもできなくなった

との声が関係者からあがっている。

必要な診療報酬を保障して、

国民の命の砦を守るのは、
政治の最低限の仕事ではないのか。

元気に明るく生きて行ける社会のために、医者のホンネを綴りたい

大混乱の診療報酬改定説明会 '08,03,27
これだけ苦労して、点数削られて、
開業医はまず大幅収入減でしょうから..

開業医が自民党を信頼することなど、
未来永劫になくなるかもしれませんね。

大多数の開業医がほんとに思ってること..
自民党、 厚労省、財務省!みんな、消えてなくなれ! 

    

NIKKEI 2008,02,20

政府は歳出削減の一環として、
社会保障費の増加を毎年2200億円抑制する目標を掲げている。

舛添要一厚生労働相はこの見直しを求め、
予算確保の必要性を訴えた。
政府は2007年度から11年度までの

5年間で社会保障費の自然増を1兆1000億円圧縮する方針を決定。

各年度ごとに2200億円の抑制が前提となっている。

CBニュース 2008,02,20

国民健康保険(国保)料の滞納によって

国保証を取り上げられ「資格証」を交付された被保険者
2006年度の受診率が、
一般の被保険者と比べて「単純平均」で51分の1に止まっていることが
2月20日までに明らかになった。

国保加入世帯は、無職世帯主が53.8%で、
「所得なし」世帯が27.1%を占めている。

年所得200万円の4人家族で年間保険料が
約43万円と収入の2割以上に達し、
滞納世帯は約27%に上っている。

被保険者が支払う各保険料:
厚生労働大臣の認可を得た健保組合の平均3.27%に対し、
国保は8.47%になっており
「所得に比べて保険料が高すぎることが、
国保料滞納の基本的な要因」という指摘もある。

CBニュース 2008,02,06
厚労省 土佐和男氏 『滞納者になるのは悪質な人である
           VS
石川県社会保障推進協議会の事務局長・寺越博之氏 

他の先進国と異なり、日本に最低生活保障制度がなく
無年金・低年金の高齢者がいること自体が問題だが

その上高額な保険料まで徴収しようというのか。

資格証明書の発行は、滞納者を悪質な人と決め付け
低年金・無年金の人の命を奪うものだ。

これは憲法違反以外のなにものでもない。』

菊池英博氏 (日本金融財政研究所長) '08,05,05 日医NEWS 以下抜粋

混合診療自由化が国民皆保険を破壊する.認めてはならない

政府は,イギリスで失敗し,
アメリカでさらに医療システムを崩壊させている
市場原理型医療システムを強引に日本に導入しようとしており,

その突破口として,
混合診療を全面的に自由化させようとしている.

導入推進者は,
「混合診療を認めれば,未承認の新薬や治療法を利用しやすくなる」
と有利な点を強調する.

しかし,実態は,
自由診療」分野(保険外診療)で扱う
厚生労働省が認可していない医術や薬品は,
製薬会社や病院が自由に価格を決めるため,
より利益の上がる商品となる.

これによって,診療費は高騰する.

保険会社は自由診療向け保険といった新種保険を開発するなど,

外資系の保険会社,製薬会社が中心となって,
医療保険に対する公的支出を削減しろという圧力を掛けてくる

つまり,混合診療は市場原理型医療への突破口となるのだ.

そうなると,
「健康と人命には貧富の差がない」という国民皆健康保険が崩され,
貧乏人は医者にかかれない」ことになる.

混合診療の自由化要求は,
国民皆保険制度破壊を狙うであり,絶対に認めてはならない.

こうすれば世界一の医療システムを堅持できる

提案

(1)二〇〇六年六月の「医療制度改革法案」を全面的に凍結する

(2)混合診療の認可を絶対に認めない

(3)当面の医師不足対策として,
早急に看護師・勤務職員といった医療職以外の人員の倍増を図る
(アメリカには,この種の職員が日本の十倍いる)

(4)日本の医療費のGDP比率は八%であり,
OECD加盟国平均九%より一%(五兆円)少ない.

早急にこのギャップを埋め,
短期間に診療報酬を増額し,
さらに十年単位の計画として,
病院の近代化,看護施設の充実,高齢者の医療施設の開発など,
新規分野への医療費を増やす(五兆円). 

これらの資金は,
われわれ国民の預貯金と政府保有の金融資産を活用していけば,
増税なしで調達できるのだ.こういう政治と政策が望まれる.

国民皆保険制度 『破壊の罠』--『混合診療の自由化』