考える葦 パスカル『パンセ』

人間は 一本の葦(あし)にすぎない。自然の中で 最も弱いものである。
L'homme n'est qu'un roseau, le plus faible de la nature;

だが、それは考える葦だ。
mais c'est un roseau pensant.

人間を押しつぶすために、宇宙全体が武装する必要はない。
Il ne faut pas que l'univers entier s'arme pour l'écrasser:

蒸気や水滴でも 人間を殺すのに十分だから。
une vapeur, une goutte d'eau, suffit pour le tuer.

しかし たとえ宇宙が人間を押しつぶしたとしても、
Mais, quand l'univers l'écraserait,

人間は 自分を殺すものより 崇高である。
l'homme serait encore plus noble que ce qui le tue,

なぜなら、人間は 自分が死ぬことを、
puisqu'il sait qu'il meurt,

そして宇宙が自分よりも優(すぐ)れていることを
et l'avantage que l'univers a sur lui,
知っているからだ。

宇宙は そういったことを何も知らない。
l'univers n'en sait rien.

それ故、私たちの尊厳のすべては、考えることにある。
Toute notre dignité consiste donc en la pensée.

私たちが立ち上がるべきは そこからであって、
C'est de là qu'il faut nous relever
私たちが満たすことのできない空間や時間からではない。
et non de l'espace et de la durée, que nous ne saurions remplir.

だから、よく考えるように努めよう。
Travaillons donc à bien penser:

これこそ 道徳(倫理)の原則である。
voilà le principe de la morale.

Blaise Pascal, Pensées
ブレーズ・パスカル『パンセ』
2006,09,16 NHK radio france

    ★ 

私が中学の頃、
大東亜戦争すなわち 太平洋戦争が勃発(ぼっぱつ)した。

旧制高等学校の1年生の時、
徴兵延期が撤廃(てっぱい)され、学徒動員が行なわれた。

私はすぐに出陣せず、勤労奉仕に通い、
空襲に怯(おび)えつつ、死の知らせとしか思えない召集令状を待った。

政治家や学者や詩人は、しきりに

「スメラミコト(天皇)のおっしゃるように、

お前たちは 人をなるべく多く殺し、そして 死ね」と語った。

当時、誰一人として、

私に「君 死にたまふことなかれ」と言ってくれる人はいなかった。

そこが、
日露戦争と太平洋戦争の根本的な違いであったのかもしれないが、

たった一人でもいい、

私にはっきりと
「君 死にたまふことなかれ」と言って欲しかった。 

梅原猛氏 『百人一語

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学校で教わる歴史というのは結局、

勝った者や支配者がまとめた記述にすぎない。

そこに、敗者や弱者への視点を探すのは、極めて難しい。

そうした歴史を学ぶことに どれだけの意義があるのか。

今となっては 非常に疑問に思うのだ。

歴史に限らないが、

今(というよりも随分前から)の学校教育は、暗記一辺倒になりがちだ。

これではいくら教師が熱心に教えたところで、

子供たちは まったく面白くない。

それよりも、好きなことを見つけさせて、

それに存分(ぞんぶん)に取り組ませるほうが、

まっとうな人格形成ができると思う。

そういうと「我慢させることも教育だ」と、反論が返ってくる。

しかし、我慢させる機会は勉強以外に、いくらでもある。

勉強だけをして、いい点数さえ取れば、

ほかは甘やかして育てている親も多いが、

それこそ本末転倒だ。 

ビル・トッテン氏 『日本は略奪国家アメリカを棄てよ

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学校生活で作られた”自分の仮面”を はずす
やる気 「想像力と創造性」を萎えさせない
学問に情けあり 西山夘三 と早川和男